ニュイ・デ・ミュゼ(美術館の夜)のオランジュリー
ヨーロッパの主要美術館、博物館が無料になる「ニュイ・デ・ミュゼ(Nuit des musées)」となった5月20日土曜夜、欲張ってオランジュリー、オルセー両美術館をはしごして、さらにクリュニー中世美術館にもと目論んだが、最初のオランジュリーは午後6時30分開館の時点で長蛇の列。これではオルセーは到底無理と飛ばしてクリュニーにしたが、やはり大行列で断念した。
オランジュリーは2度目の訪問で、これもたまたまだけど、東京のブリヂストン美術館展が開かれていた。タイトルは「TOKYO PARIS」。青木繁や坂本繁二郎の洋画に加え、モネの「睡蓮」など印象派を中心にした同館の主要西洋絵画がことごとく展示され、驚いた。入館者もこれが一番の目的らしく、この会場に直行する人が多い。モネの睡蓮の部屋以上の人気(こちらは以前に見ているのかも)なのに2度びっくり。ブリヂストン美術館は1度行ったことがあるが、作品が生まれ故郷のパリに里帰りして、パリの人々の眼に触れる面白さ。東京とパリのシンクロ。ボストン美術館から日本美術、浮世絵が里帰りするのと相似形ですね。ブリヂストン美術館は建て替え中で、この企画が実現したようだ。
オランジュリーはモネの大睡蓮以外は画商ポール・ギヨームのコレクションが中心で、ルノワール、セザンヌ、マチス、モジリアーニ、ユトリロ、ルソーと、あの時代の画家がずらりと並ぶのだが、ブリヂストン美術館はコレクターの眼が素晴らしかったのか、同じ画家の作品でも、ギヨームコレクションに匹敵、あるいはそれ以上に質の高い傑作が並んでいると思えた。
やはり、モネとセザンヌ
大睡蓮の部屋。ジヴェルニーのモネの庭とゆかりのルーアンを昨年訪ねた。再見の大睡蓮は素晴らしい。日本の屏風画のようでもある。モネのジャポニスムがこんなところにも、と勝手に解釈する。
帰国して書店で雑誌「ブルータス6月15日号」を何気なく開いて驚いた。画家の山口晃さんのブリヂストン美術館展訪問記が掲載されていたから。ポール・ギヨームのコレクションが相似形であることを写真で見せていた。なるほど。
山口画伯はブリヂストンのセザンヌ「サント・ヴィクトワール山」に強く引かれたらしい。この絵はアンドレ・マルローが一連の「サント・ヴィクトワール山」のなかでも傑作、として石橋コレクションを羨ましがったというエピソードも雑誌で紹介されている。サント・ヴィクトワールはセザンヌにとって、北斎の富士みたいなものか。絵を描くこと以外は考えていない同じ「画狂人」でも、マルチな北斎に比べ、テーマへの偏執はセザンヌの方が強かった気もする。パリからの小旅行で、南仏エクス・アン・プロヴァンスに向かうTGVから、白いサント・ヴィクトワール山が遠景に見えてきた時の感動はいまだ鮮明だ。
Programme - Nuit européenne des musées