椅子の風景ー恩田陸さんの「居場所」から
平成最後の年の初め、読んでいる朝日新聞と読売新聞の記事で一番印象に残ったのは、作家恩田陸さんの寄稿でした。朝日の1月5日朝刊オピニオン欄、「TOKYO再び④居場所」。2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたシリーズのひとつです。
恩田さんはピカピカの商業施設に居心地の悪さを感じる中で、たまたま書店で手に取った、あるプロジェクトの写真集の魅力について書いています。
「決して特別な風景というわけではない。誰かが持ってきた椅子を並べた木陰とか、道路の上に突き出た庇の下の待合所とか、つぎはぎで付け足されたトタン屋根が並んでいる街角とか。けれど、人が心惹かれる風景や『居たくなる』場所は、やはり人の営みの記憶が感じられ、ゆったりとした時間の流れの感じられる場所なのだ」
新しい商業施設が次々に生まれ、風景の変貌激しい東京に、不安と悲しみを覚えるのはなぜか、と作家は自問します。最初は、歳を取って知っていたものが消えるのが淋しいからとか、心が固くなって新しいものが怖いからだと考えていたが、最近になって、「新しい風景の中には自分の『居場所』がないんじゃないか、と薄々感じているからだ、と思うようになった」
文章を読むうち、昨年ブログに載せたスペイン・セビーリャの街角の写真が自然に思い浮かびました。見直すとまさに「椅子を並べた木陰」。キャプションに「暮らしてみたくなるような一角」と書いていました。そこで、過去に海外で撮った「椅子の風景」写真をピックアップしてみました。自分や妻が写っているのを外すと、意外に少ないですね。日本でも、もっと座り心地のよさそうな椅子があるにちがいない。探しに行きましょう。
写真集は東日本大震災のあと、大学の建築科の研究室が「人々は今どのような場所を求めているか」というテーマの研究結果を本にしたもの、と書かれていますが、現物は見つけられないままです。
スペイン・セヴィーリャ
パリ・リュクサンブール公園
パリ・リュクサンブール公園
パリのパレ・ロワイアル庭園
パリ・ルーヴル美術館のカフェ
パリ・ルーヴル美術館のカフェ
パリのブラッスリー・リップ
ブリュッセルのレストラン
パリのカフェ・ド・フロールの朝
スペイン・ミハスのレストラン
パリ・オランジュリー美術館のモネの「睡蓮」の間
ローマのドーリア・パンフィーリ美術館
「考える人」も坐っているNY・メトロポリタンミュージアム
パリのセーヌ川遊覧船バトー・ムーシュ
ローラン・ギャロスの観覧席
ホノルルのホテルベランダ
パリのホテルの中庭
パリのホテルのバー
フィレンツェのホテルのテラス