パリ95番バス

映画と本とアートと遊歩

星野リゾートの岡本太郎

青森の星野リゾート奥入瀬渓流ホテルには、岡本太郎の作品がある。

一つはエントランスを真っすぐ進んだ先のラウンジ「森の神話」の巨大な暖炉。

ブロンズ製で天井から吊り下げられ、縦長の梵鐘のようでもある。

渓流、樹々、人間、妖精、動物が一体になり、踊っているような祝祭感。岡本太郎がパリ時代に影響を受けたピカソの造形も思い起こさせる絵が表面を飾っている。

夜には薪が燃やされ、時間を忘れてソファでくつろぎたくなる。

東北を旅していた太郎が、星野リゾート前身のホテルの経営者と知り合い、1990年に制作したとか。

こちらは西館ロビーにある暖炉「河神」。ねじれた大木のような、川の流れのようなものと、妖精か人間か。渓流のしぶきが妖精になった様子を描いたとされるが、自然に翻弄される人間、にも見える。1996年、太郎が亡くなる一か月前に完成した遺作だという。

十和田湖を水源に、ブナやミズナラ、カエデ、シダの原生林を縫って流れる全長14㌔の奥入瀬渓流。二つの暖炉のモチーフになった渓流に沿って歩いた。

岩を洗い白いしぶきを上げる流れは至る所に。これは有名な「阿修羅の流れ」

大小の滝も次々に現れる。ここは「雲井の滝」。

「銚子大滝」

星野リゾート奥入瀬渓流ホテルの敷地には、太郎作の河童とも宇宙人とも縄文土偶ともつかないオブジェがポツンと置かれ、神秘の森にしている。

芸術は爆発だ!」

1970年代の太郎さんのテレビCMをまねてポーズを取ってしまった。

「グラスの底に顔があってもいいじゃないか!」のフレーズも記憶に鮮明だ。

70年の大阪万博太陽の塔で話題になったあと、このCMで「変わった芸術家おじさん」のキャラクターが定着した。

万博の少し前、高校生の時に読んだ太郎さん本「今日の芸術」に脳天を貫かれた身としては、太郎さんが再評価され、今、太郎展が全国を巡っている、ということを素直に喜びたい。

太郎さんは京都の雅な文化や奈良の渡来文化には目もくれず、日本の深層の荒々しい縄文文化を再発見、再評価した。世界遺産三内丸山遺跡のような縄文遺跡が数々ある東北に魅かれたのもわかります。

展覧会の岡本太郎作品もいいけれど、街中やホテルのパブリックアートに太郎作品は似合っている。

これは長野県野沢温泉にあるレリーフ「野沢の乙女」

野沢温泉の街灯や温泉のタオルなどに使われているイメージロゴ「湯」も一目で太郎さんとわかる

いずれも野沢温泉の旅館にあった作品。

これは群馬県草津温泉の湯畑前にある太郎作品

そして最後は、大阪の万博記念公園にそびえる「太陽の塔