スタールの風景、カンヌの手形
花壇が観光客を迎える
地中海に面したアンティーブは2000年以上前のローマ時代からの港町で、中世には外国との貿易拠点となり、今も残る城壁は戦争や疫病から街を守るためのものだったとか。面積26平方㌔、人口7万5000人ほど。
ニースからアンティーブ駅まで鉄道でわずか15分だったが、到着は午後4時を過ぎた。
パリからの行程を振り返ると、ホテルからメトロとバスでオルリー空港へ行くつもりが、バスが理由不明の全面運休であわてて電車を乗り継ぐ。空港は日本の国内線の比ではない厳しいセキュリティー・チェックで、時間に余裕を見たつもりが、結構ギリギリの感じに。エール・フランス機でオルリーからコートダジュール空港まで1時間30分のフライトは、出発が30分遅れ、ニースのホテルにチェックインしたのは午後3時ごろになった。
やれやれと部屋に荷物を置き、ニース・ヴィル駅から予定より1本(1時間)遅らせた列車でアンティーブにたどり着いたのだった。
なので、ピカソ美術館以外、ほとんど街を見ていない。
とはいいながら、駅から美術館に向かう道すがら目にした、豪華そうなクルーザーが並ぶヨットバーバー、海水浴場、明るい陽光、青い海と空、白い雲はリゾート感たっぷり。
クルーズ船がびっしり係留されている
ピカソ美術館に行く城壁沿いの道の向こう側はビーチ。6月上旬というのに盛夏を思わせる光景
近くまで行けなかったが、人型の透け透けアートが海岸に。遊び心はピカソ譲り
美術館に向かう途中で出会った観光客らしき人たち
帰国してニコラ・ド・スタールの展覧会図録を見ていて、気づいたことがあった。ヨットハーバーから何気なく撮った写真の船のマストと遠景の砦が、作品「海景、マスト」(1955年)の風景とよく似ていることに。
スタールの「海景、マスト」(展覧会図録から)
美術館から駅に戻るのに通った旧市街は、市場らしきものがあり、石畳の道、石造りの家も雰囲気がある。
ペイネ美術館では似顔絵イラストの特別展が開かれていた模様で、表には懐かしい名優ジャン・ギャバンの似顔絵の展覧会ポスターがあったが、カンヌに向かうため、入場もせずに駅へ。
市場らしいが、夕方で閑散
石畳の旧市街
ちゃんと広場もある。椅子は地中海ブルー
アンティーブ駅(上)からカンヌ駅(下)へは列車で10分と近い。
国際映画祭は5月に終わったばかりで、観光客もまばらな街は、祭の後の虚脱状態にあるように見えた(思い込みかもしれないが)。
一目散に映画祭のメイン会場、パレ・デ・フェスティバル・デ・コングレへ。スター、セレブの記念撮影で有名なレッドカーペット、ではなく、なぜかブルー・カーペットが階段に敷かれ、次々とポーズをとって撮影する観光客。なぜ赤ではないのかと疑問を抱きながらも、妻と二人、当然、カメラの仲間入りをする。
建物前の広場には映画スターや監督の手形が埋め込まれている。刻まれたサインは読み取りにくいものもあるけれど、宝探しのようで、面白い。
以下の手形は誰のものかわかりますか。最後に書いています。
デニス・ホッパー、メグ・ライアン、シルベスター・スタローン、ソフィア・ローレン、デヴィッド・リンチ、メル・ギブソン、フランチェスコ・ロージ、ミシェル・ピッコリ、キャメロン・ディアス、ニコール・キッドマン、シャーロット・ランプリング、ジャン・ポール・ベルモンドでした。
ついこんなこともしてしまいたくなる。
カンヌはそれだけ、でした。カンヌ市のみなさん、すみません。