イタリア旅行番外編 様々な「受胎告知」
10月に訪れたイタリアでは、ウフィッツイ美術館のレオナルド・ダ・ヴィンチをはじめ、いろんなところで「受胎告知」に出会いました。キリスト教アートでは、「キリストの磔刑」「聖母子像」と並ぶ人気テーマのようですが、キリスト教とは距離のある日本人として、一番絵画的に面白いと思うのが「受胎告知」です。
現れた大天使ガブリエルにいきなり「懐妊」を告げられたマリア。その劇的瞬間と、戸惑い、問いかけ、受け入れというマリアの揺れ動く心理を、画家たちが想像力と技術を駆使して競い合うように描きました。
クリスマスにちなみ、「受胎告知」を並べてみました。
シモーネ・マルティーニ 1333年
フィレンツェ ウフィッツィ美術館
澁澤龍彦は、この絵がお気に入りだったらしく「幻想の肖像」の中で、こう書いている。
「この美少年の姿で表された天使と、ういういしい処女のすがたに描かれたマリアの表情を、よくごらんいただきたい。まるで東洋人のように細い目をして(流し目のようだ!)、恥ずかしげに身をよじらせたマリアの姿態には、どこか日本の浮世絵の媚態を思わせるような、そこはかとないエロティシズムさえただよっているように見えないだろうか」
フラ・アンジェリコ 1440年代
とんでもない話を聞かされながら、従容と受け入れるマリアと、二人を取り巻く静謐な世界
同上。僧房内に描かれ、よりシンプルに。
フィリッポ・リッピ 1445~1450
ローマ ドーリア・パンフィーリ美術館
メロッツオ・フォルリ 15世紀
ローマ パンテオン
レオナルド・ダ・ヴィンチ 1472~1475 ウフィッツィ美術館
大天使ガブリエルの翼が鳥の翼のようなリアリズム
ボッティチェリ 1489~1490
ウフィッツィ美術館
「いや、いや」のポーズ。
同上
フラ・バルトロメオ 1497
ウフィッツィ美術館
小祭壇の扉に明暗のみで描かれている
ティッツィアーノ 1540
ティントレット 1582~1585
サン・ロッコ大信徒会館
追随を許さない劇的描写!
作者はわからない
ウフィッツィ美術館
ミラノのドゥオーモの扉を飾る銅板レリーフ
サルヴァドール・ダリ 1960
ローマ ヴァチカン美術館