パリ95番バス

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イタリア旅行②美しきドゥオーモと街歩き

「最後の晩餐」の余韻を味わいながら教会の外に出る。

教会前の広場からまっすぐ延びた道の突き当りに、なにやらビルのような塔のようなものが立っている。得体が知れない。

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教会そばに学校、その向かいに文房具店がある。妻がNHKBSプレミアム「世界ふれあい街歩き」のミラノ編(2017年6月放送)に登場した店ではないか、と言うので、入ってみた。学校の道具を入れたリュックを家に忘れて登校してしまった女児と母親が店に駆け込んで、ノートなどを買い求めるという番組の場面を、妻が覚えていた。

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店の奥に白髪、眼鏡に青いセーターのいい感じのオヤジさんがいる。「日本のテレビに出ていましたね」と言うと、「やってくる日本人が増えて、日本語を勉強しているところです」とにこやかに話し、いくつかの日本語のフレーズも披露してくれた(何かは忘れたけれど)。で、記念写真にも納まっていただきました。

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あとで「街歩き」のHPを見ると、このお店「カルトレリア・ルッフィーニ」は1909年創業で、店主のディオドヴィッチ・ルチアーノ・アンドレアさんは71歳。店に置かれた機械で今もノートなどを手作りしている。

教会脇の道路にトラムの線路が走っている。再びドゥオーモに行くために停留所を見つけ、やってきたトラムに乗る。大阪に残るチンチン電車阪堺電気軌道の車両より頼りなげな車両だ。日本でもいくつかの都市で走る路面電車は、便利だし、高齢者に優しいし、街の風情に彩りを与えるし、いいなあと思う。ミラノではいろんな種類のトラムが走っている。

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このトラムに乗った

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全身広告トラム

昼のドゥオーモはさすがに人が多い。中を見学する人の列ができている。入口に銃を手にした迷彩服の兵士?テロへの警戒。

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ガイド本によると、ドゥオーモは1386年、ミラノ領主ジャン・ガレッツォ・ヴィスコンティの命で、聖母マリアに捧げるために着工されたが、度重なる戦争で建設工事が中断、ミラノ公国を征服したナポレオンによって1813年、一応の完成をみた。ここまでに430年がかり。その後も尖塔を建てたりステンドグラスを直したりが続き、600年で今の姿になったとか。 

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尖塔135本の巨大なゴシック教会で、108mの最高の塔には黄金のマリア像が立つ。ゴシック教会は色々見てきたけれど、大きくて、白くて、繊細な彫刻におおわれた姿は、ピカイチの美形かもしれない。内部も屋上もよさそうだったが、列車の時間もあって行列に並ぶのはあきらめた。

 

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青銅の大扉のレリーフ聖母マリアの生涯をテーマにしている。受胎告知、磔刑、もろもろの聖書のシーン。青緑色のなかで、ところどころ、金色に輝く部分がある。礼拝者が触って、つるつるてかてかになったようだ。赤い部分は第二次世界大戦の傷跡という。

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キリストとマリアの触れ合う手の輝き

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脚に込めた祈り?

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受胎告知の一部が赤く焼け焦げたようになっている。下のレリーフの鼻も光っている

ガッレリア・ヴィットリオ・エマヌエーレ2世も再訪する。ガラスのドーム天井から光が降り注ぐ。4階建ての建物の上の方は絵で装飾され、十字に交差するアーケードの通路の床にはモザイクの絵。完成は1867年という。パリのパッサージュは18世紀末からと歴史が古いが、こうしたガラス天井のアーケード式ショッピングモールが19世紀半ばから、世界各地にできたようだ。

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交差路の床に描かれたトリノ王国の紋章の牡牛の上で一回転すると、幸運が訪れるとか、再びミラノにくることができるとかの言い伝えがあり、人々が回転しては写真を撮っている。

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ブランドショップ、レストランに挟まれて、書店が2つある。その1店「Libreria Bocca」は「dal 1775」とあるので、240年以上前に創業、ガッレリアができる前からの老舗らしい。美術書が豊富、という印象で、エコール・ド・パリの画家モジリアーニの本も目立つ陳列がされている。そういえば、モジリアーニはイタリア出身でしたね。

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日差しが強くなり、気温が上がってきたので、ガッレリアの店で、イタリア名物のジェラートを初めて食べる。2種類を盛って3.3ユーロ。私はマンゴーとテラミス、妻はピスタッチオとバニラ。大変おいしい。名物だけのことはある。

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ドゥオーモ広場にはガッレリアの名前にもなったヴィットリオ・エマヌエーレ2世の騎馬像がある。中世以来分裂し、オーストリア、フランス、スペインの支配が入り乱れていたイタリアが、1861年に統一され、その初代国王となった人物。イタリアでは人気があるらしく、ローマには、ヴェネツィア広場に面していやでも目立つヴィットリオ・エマニヌエーレ2世記念堂があり、墓も古代ローマの遺跡パンテオンの中だ。

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イタリア統一の時代を背景にした映画といえば、ルキノ・ヴィスコンティ監督の「山猫」(1963年公開)。バート・ランカスターシチリア貴族を、その甥をアラン・ドロンが演じた。成り上がり市長の娘クラウディア・カルディナーレの晩餐会での少々品のない大笑いが、時代の変わり目を象徴し、ランカスターのそばにいつもいる姑息で戯画化された神父が、カトリックの権威の低下を示す。それら映画的仕掛けと、バート・ランカスターの黄昏ゆく貴族の名演によって、完全版3時間の長尺ながら見飽きない。ちなみに監督のヴィスコンティは、ミラノ領主ヴィスコンティ家の傍流貴族家出身。貴族の没落を身をもって知っていたのか。米俳優ランカスターも仏俳優ドロンもイタリア語は吹き替えだったと、NHK「旅するイタリア語」で明かしていた。

話が少し脱線しました。

せっかくなので、ファッション都市・ミラノを歩く。ナポレオンの名前の入ったブランド街、モンテナポレオーネ通りもウインドウショッピング。

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ビルの谷間に赤レンガの教会

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噴水をくぐって、地下に降りていくアップルの店

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イタリアでは歩くと小さな広場に出くわす。19世紀のロマン派詩人マンゾーニの銅像のもとで若者たちが語らう

このあとホテルに戻り、スーツケースを受け取って、午後2時34分発のイタロでヴェネツィアへ向かうべく、スタチョーネ・チェントラーレ(中央駅)へ歩いて行く。

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出発15分前まで到着ホームは分からず、表示板にやっと出たのを見て、あたふた、どたばたとスーツケースを押してゆく。 

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駅舎は美術館かガッレリアのよう

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上の2カットは前日撮影の夜の駅。やはり美術館ですね

イタロは2012年に運行をスタートした私鉄の新幹線。赤い車両のデザインはフェラーリのデザイナーが手掛けたため、フェラーリ特急と呼ばれているらしい。ヴェネツィアまでは一等車のPrimaというクラスをネット予約したが、2時間半の乗車で一人19.9ユーロ、2700円と安い。しかも乗車中2回、ドリンクとスナック菓子の無料ワゴンサービスがあり、大いに気に入りました。

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