パリ95番バス

映画と本とアートと遊歩

犬の話

 

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犬の一生は短い。

欠点はそれだけである。

 

「人生はワンチャンス!」という本の巻頭にある、作家アグネス・スライ・ターンボールさんの言葉。

戌年

我が家のウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウェスティ)のルーヴル(雄)は先月10歳になり、人間でいえばもう60歳。私の年齢に近づき、間もなく超えてしまうことになる。先代ウェスティは11歳で逝去。しばらく犬は飼うまいと思っていたが、ペットショップでの出会いから、妻の願いもあって半年ほどで同じウェスティを飼うことになった。

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スコットランド原産の牧羊犬で、快活、いたずら好き、少々頑固という犬種らしいが、先代がしっかり者で初対面の相手には警戒を怠らないタイプだったのに対し、二代目は、犬にも人にもフレンドリー、先代より食いしん坊で、車の中では少々行儀が悪いなどなど、犬の個性もいろいろ。孫たちに愛されてもいる。

「ぼくとボビーの大逆転」という英国映画は、ウェスティ出ずっぱりのウェスティファンにはたまらない映画で、先代が亡くなったあと、たまたまツタヤでビデオを見つけて、涙を流しながらみた。ただ、犬の映画はそんなに見ない。家に犬がいるのだから。

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我が家のカレンダーはウェスティの写真のカレンダーで、昨年版は息子がプレゼントしてくれて、2018年版はネット通販で英国から取り寄せた。日本の祝日はむろん書いてなくて、聖何とかの日とか、日本ではなじみのないメモリアルデーがあるばかりなので、3連休があってもわからないのだが、365日祝日みたいな生活なので、不便はない。それにしても、カレンダーまでというのは、親ばかならぬ犬ばかですね。

先に挙げた本(水野敬也、長沼直樹著、文響社)は犬のユーモラスな写真と著名人の名言を組み合わせた、実にほほえましく、かつためになる本で、ベストセラーだからといってバカにできない。

年の初め、テレビでも新聞でも、戌年にちなんだ番組、記事があった。

愛犬スピンクのエッセー本もある作家の町田康さんは読売新聞1月5日付夕刊に「犬の心」、朝日新聞1月14日付読書欄に「犬の物語」として寄稿している。引っ張りだこですね。「夫婦茶碗」「テースト・オブ・苦虫」などの毒ある小説、エッセーに腹の皮をよじって笑ったのと比べると、犬への視線が人間への視線より優しいので、物足りなさも感じるのだが、やむを得ない。

「人間は人間に対して自分の心を隠す。(中略)犬はそうしたことをしない。楽しいとも悲しいとも言葉で言わない。ただ気持ちを隠したり偽ったりしないだけである。そこが楽しくておもしろくてまたときに切なくて私たちは犬と暮らしたいと思う」(「犬の心」)

「犬は人間に運命を左右される。人は犬をどうとでもできる。それが物語ならなおさらである。だから物語では、犬は人の犠牲になって死ぬことが多いし、それが尊いこととされる。或いは感動的だと。しかし考えてみればこれはひどい話で、自己都合で勝手に殺しておいて、勝手に可哀想だとかいって泣いている」(「犬の物語」)

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米国のテレビドラマ「名犬ラッシー」とか「名犬リンチンチン」という賢い忠犬のお話でアメリカ的道徳を学んだ記憶があるが、放浪犬が行く先々で人を助け、事件を解決する「名犬ロンドン物語」に強く魅かれた世代でもある。米国ではジェームズ・サーバーの犬の話や、ジョン・スタインベックが愛犬とともにアメリカを横断する「チャーリーとの旅」も印象的だ。物言わぬ犬たちを作家たちが代弁する。

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旧年の読売新聞だけど、火曜夕刊の「ペットらいふ」の交遊録にやはり作家の桐野夏生さんが、「純正雑種」の保護犬モンちゃんを飼った体験を連載していた。その最後。

「言葉を喋ることのできない犬を幸せにするには、人間の努力が必要なのだ。

でも、飼い主は決して犬の『ご主人様』ではない。

犬とともに生きることで、私たちは彼らの無垢の愛情や、賢さを学ぶのである。それが私たちにとって、日々の喜びになると気付かされるのだ」

ソニーは今年、19年ぶりに犬型ロボット「aibo」を発売した。人口知能搭載の相棒らしいが、今はまだ生身の犬がいい。