二度目の倫敦②トラファルガー広場からボンドストリート
ロンドン2日目の朝。ホテルの中庭へ出る。電飾の噴水があり、ゴージャス感の中にアジア的テイスト。
磨き上げられたロビーの床。レセプションの女性はインド系が多いようだ。
レセプション背景の絵はお馴染み近衛兵とインドの少女?
作家サマセット・モームは「イギリスでおいしい食事をしようと思うなら、朝食を3回食べることだ」と言ったそうだ。ホテルのフル・イングリッシュ・ブレックファストを食べて、その通りだと思った。
パリのホテルの朝食もクロワッサン、バゲット、ハム、チーズ、カフェ・オレで十分幸福になるけれど、こちらは卵やソーセージ、オートミールなど温かいもの、果物、野菜もふんだんにあって(日本のホテルの朝食ビュッフェもそうではありますが)、品ぞろえが豊富。目玉焼き、スクランブルエッグがオーダーでき、定番の焼きトマト、マッシュルームもある。旅先での1日を始めるに当たって、ふだんの2倍量のエネルギーを充填する感じでしょうか。
遠慮がちに「Indian Breakfast」と書かれた一角には、インド系ホテルならではの朝カレーも用意されていた。
ホテル玄関には、かようないでたちのドアマンがいて、ドアを恭しく開けて、外出を見送ってくれる。
前日はすっかり暮れていて、よくわからなかった ホテルの外観。何様式かは知らないが、ずいぶん立派で驚いた。
昨夜も通った貧困の子どもたちの学校、転じてブライダル展示ハウス、朝見ても不気味さに変わりはない。
最寄りの地下鉄駅セント・ジェームズ・パークまで歩いて3分ほど。
ロンドンの地下鉄は世界最古の1863年開業。地上の入り口の標識は、赤い輪と青地に白の「UNDERGROUND」の文字がかわいくてよく目立つ。駅のホームにも同じ意匠で駅名が表示されている。パリなら「METRO」あるいは「METROPOLITAIN」、ニューヨークだと「Subway」。
駅構内も車両も通路も天井が丸く、「Tube(チューブ)」と呼ばれている。ロンドンの地下を縦横に走る筒、管のイメージ。12路線、270駅、延長400キロ。延長は東京を上回るが、1日利用客数は東京の940万人に対し、360万人。ということは、東京の混雑がいかにすごいか、ということですね。
地下鉄、バス7日間乗り放題のトラベルカードを組み込んだオイスターカードを購入した。デポジット含め£40(6,000円)は高いようでもあるが、なんせ地下鉄は現金だと一回£4.9(730円)とべらぼうな料金なので、観光客でオイスターカード(いろんな種類がある)を買わない人はまずいない、はず。
丸い通路。
これは、とある駅の地下通路で見つけた監視カメラらしきもの。イギリスにはテロその他の犯罪対策として600万台の監視カメラがあり、その3分の1がロンドンにあるとされる。人口比では世界一の密度らしい。監視社会の功罪はいろいろでしょうが、カメラについては治安の面でプラスに考えたい。変な権力者が現れない限り、ですが。
チャリング・クロス駅で地上に出ると、トラファルガー広場。高さ50mの円柱の上にネルソン提督像が立つ。ちょっと高すぎるんではないかとも思うが、1805年、ナポレオン率いるフランス、スペインの連合艦隊とのトラファルガー海戦を勝利に導いた(本人は戦死した)記念であり、イギリス本土へのナポレオンの上陸を阻止したことが、どれほどの歓喜だったか、円柱の高さが示しているというものだ。
記念柱の台座を、4体のライオン像と提督が勝利した4つの海戦のレリーフが囲んでいる。ライオン像は銀座三越のライオン像のモデルだそうで、ナポレオン軍の大砲を溶かして鋳造したとされる。
パリ・ヴァンドーム広場のナポレオン像のある記念柱は、アウステルリッツの戦いに勝利したナポレオンが建て、円柱を取り巻くブロンズのレリーフは、負かしたヨーロッパ連合軍の大砲を溶かして作ったという話があり、みんな同じようなことをしているのですね。
小雨模様。通りにはクリスマス・イリュミネーション。
ショーウインドウに二階建てバスのおもちゃかと思ったら、トースターだった。
アスピナル・オブ・ロンドンは高級皮革アクセサリーの店だそうで、ここもクリスマスプレゼント商戦仕様。
ピカデリー・サーカス。人気スポットだが、小雨の朝、人はまばら。ロータリーを二階建てバスが行き交う。このあと昼過ぎに通ると、円形広場に人が群がっていた。
広場にある「エロスの像」
ピカデリーのメーンストリートに面した王立芸術院。美術学校、ギャラリーを併設したアカデミーが、銀座のど真ん中のような一等地にあるとは。
その向かいが、高級食料品の老舗デパート、フォートナム&メイソン本店。イングランドとスコットランドが統合して大英帝国が発足したその年、1707年に創業した英国王室御用達の店。東インド会社による紅茶の輸入、ナポレオン戦争やナイチンゲールが活躍したクリミア戦争での戦地への食品供給、世界の秘境への探検隊の携行食品など、大英帝国の歴史と密に絡んできた。
はちみつのコーナー
Xmas仕様の1階には、紅茶、ビスケット、ショートブレッド、ジャム、はちみつ。地階にはワインや生鮮食料品。
日本のデパートにも支店がある。妻は土産購入はここフォートナム&メイソンの本店でと考えていたらしいが、当方はこうした店に疎く、店に足を踏み入れて、なにもかもが洒落ていることに驚き、イギリスのセンスの良さに感じ入った。買い物ハイにさせる何かがある。ふだんは庶民には手が届きにくい、でも、特別な日には買いたい、と思わせるもの。Xmasソングのオルゴールがついたビスケット缶をつい買ってしまう。
この日は平日の早い時間帯で混雑はなかったが、Xmasシーズンのせいか、後日の再訪ではラッシュアワー状態で、レジは大行列。店員もてんやわんやの中、クレジットカードを端末に差し込むと、ディスプレイに「ありがとうございます」とひらがなの文字が出て、えっと思う間もなく、ロマンスグレイの店員が「このマシンはクレバーなんだ」と笑顔で話し、ユーモアを忘れない余裕に、さすがイギリスの老舗、と。
通りに黒のボックス。電話ボックスは赤が特徴(下の写真)のはずだが、これは表示されているようにWiFi用らしい。
脇道には洒落たアーケードがいくつもある。
西へ向かうと、ザ・リッツ・ロンドン。宿泊はできないけれど、せめて見学をと、中に入ると…
吹き抜けのロビーに豪奢なクリスマスツリー。
ザ・リッツ・ロンドンは、パリのザ・リッツができて8年後の1906年に開業した。チャーリー・チャップリンが米国からロンドンに里帰りした時に宿泊し、周辺大騒ぎになったこともあったとか。
方向を北に変え、オールド・ボンド・ストリートからニュー・ボンド・ストリートへと歩いていく。
ブランド街です、あまり縁のない、けれど、装飾には心惹かれるものがある。Xmasプレゼントで書き入れ時なのでしょう、どの店も飾り立てている。ここは米国のティファニー。ロンドンタクシーとのツーショット。
ボンド・ストリートと聞いて、映画、小説の007シリーズのジェイムズ・ボンドを思い出し、世界に知られた007の名前を通りに付けたのではないか、とか、逆に作者イアン・フレミングがこの通りを気に入っていて主人公の名前にしたのではないかとか、ロンドン初心者はつい想像してしまうが、どちらも間違い。ジェイムズ・ボンドの名は、フレミングが愛読していた鳥類の本の作者名から取ったと、本人が言っているらしい。
英国が誇るブランド、バーバリーの本店(右側)の入り口にはユニオンジャックが2本、はためく。日の丸を掲げた日本のブランド店、というのはお目にかかったことがないが…。
ここシャネル、フランス。窓にクリスマスツリーのオーナメントのような飾りが。
ここは…
スイスのロレックスにスペインのロエベ。
ブランドに目のないパートナーが一緒だったら、あまり歩きたくないストリートではあるが、世界のブランドギャラリーと考えれば、楽しむこともできる。
通りを進むと、ベンチにルーズベルト米大統領とチャーチル英首相が座っていたので、仲間入りして、世界情勢について語り合った。
このあと、ボンド・ストリートと並行するリージェント・ストリートに出て南へ。
1875年創業のデパート、リバティ。チューダー様式の木組みの建物が目を引く。
リバティ脇のストリートには歴史を感じさせる時計も。
おもちゃのデパート、ハムレーズの前で、何のコスプレかわからないが、歌っていた。Xmas商戦で、ここも中は大にぎわい。
この通りにはユニクロやザラやカルバン・クラインがあって、ボンド・ストリートに比べるとカジュアル系で庶民的。
突然、馬の像が。
ロンドン名物二階建てバスは赤色が特徴だが、近ごろはラッピング広告のバスが走っている。
大英帝国の絶頂期の1851年に開かれたロンドン万博で、押し寄せる見物客を効率よく輸送するために考案されたのが、二階建て馬車。その30年ほど後に、エンジンのバスが走り始めたが、これは馬車にならって最初から二階建てだったらしい。バス会社の競合、統合の中で目立つ赤が採用されたとか、ドイツからのテスト用バス、ルートマイスター(今も一部で走っているらしい)が赤色だったからとか、諸説あるようだが、ロンドンの風景、天気には、赤い二階建てバスがよく似合う。