ホテル ドービュッソン(Hotel d'Aubusson)
17世紀の邸宅を改装した6区サン・ジェルマン・デ・プレ地区にある洒落た五つ星ホテル。1泊300€~400€と、馴染み宿より少し値が張るので、1年前に2泊だけさせていただいた。値が張る分、プチゴージャス感が味わえる。
歴史を感じさせる サロンの家具調度、朝食用レストランの装飾。アニメティの石鹸、シャンプーはエルメス、部屋にエスプレッソマシン。夜はジャズバーになるカフェ・ローランとカフェに続く中庭。地下にはギャラリー。朝食メニューはラタトゥイユもあって一味違う品ぞろえ。女性スタッフの1人は日本語ができる。
アンティーク家具が並ぶサロン
ジャズバーになるカフェ・ローラン
花が飾られたカフェの中庭席
タペストリーのある朝食のレストラン
エルメスのアメニティ
その程度のホテルなら日本にごろごろある(しかももっと低料金で)かもしれないが、パリで、手の届く料金でとなると、たぶんそんなにあるわけではない。
リッツ、クリヨン、プラザ・アテネ、ムーリスといった高級ホテルはほとんど前を通るだけなので、中がどんなものか知らないが、読売新聞によると、こうしたホテルも伝統と格式だけで客が来る時代は終わり、大規模改装を施して、ジムやプールなどを備えたモダンホテルへのチェンジを図っているらしい。客層が激変しているのも一因ではないかと想像する。ドービュッソンの贅沢感を少し味わうだけで私には十分です。
それはともかく、このホテルもロケーションがいい。セーヌ河畔まで歩いて3分ほど、メトロのオデオン駅も5分で行ける。6区でもカフェに集まる人のにぎわい度ではピカイチではないかと思われるビュシー通り、現存するパリ最古のカフェ、レストランとされるル・プロコープとその裏に位置するパッサージュも近い。スーパーのカルフール、パンのポール、日本人に人気の食料品店ダ・ローザ、紅茶のクスミティも。高級店はなく、雑多なお店の集積度が高いので、ごちゃごちゃ感がつよいエリアだけど、それもまたパリ混沌の魅力です。
ホテルから歩いて3分ほどのセーヌ川にかかるポン・ヌフ。シテ島をはさんで右岸とつながるこの橋は17世紀初頭に完成し、名称は「新しい橋」(英語ならニュー・ブリッジ)なのに、現存するパリ最古の橋、ということでよく知られている。
レオス・カラックス監督の映画「ポンヌフの恋人」(1992年)はこの橋に住むホームレスの話で、ジュリエット・ビノシュが失明の危機にある女画学生役を演じた。ビノシュはその後、キェシロフスキ監督の「トリコロール 青の愛」(1993)でヴェネツィア国際映画祭女優賞、ミンゲラ監督の「イングリッシュ・ペイシェント」(1996)でベルリン国際映画祭銀熊賞(アカデミー賞助演女優賞も)、キアロスタミ監督の「トスカーナの贋作」(2010)でカンヌ国際映画祭女優賞と、世界三大映画祭すべてで女優賞を得た。いずれの映画も人生あるいは男女の深淵を垣間見させる物語。余談になりましたが、ポン・ヌフからの連想で、つい。
昼も夜もにぎやかなビュシー通りは、ホテルの目と鼻の先
パン店・ポールの前で、路上ジャズ
パッサージュ・ド・ラ・クール・ドゥ・コメルス・サンタンドレ(長い名前だ)。最古のカフェ・レストラン、ル・プロコープはこの奥ある