パリ95番バス

映画と本とアートと遊歩

ブラッスリー・リップとル・プロコープ

 

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 ウディ・アレンの映画「ミッドナイト・イン・パリ」には1920年代にモンパルナスやサン・ジェルマン・デ・プレ界隈に集った作家、画家、シュルレアリストが多数登場する。その中でも存在感たっぷりなのがヘミングウェイ。新聞社の特派員としてパリに住んだ小説家のマッチョな登場の仕方がなんともおかしかった。パリを讃え、エピグラフ(以下に引用)が有名な遺作「移動祝祭日」は、2015年のテロ後、パリの人々に再び読まれたとか。

If you are lucky enough to have lived

in Paris as a young man, then wherever you

go for the rest of your life, it stays with

you, for Paris is a moveable feast.

                 ERNEST HEMINGWAY

                 to a friend, 1950

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ギャルソン

「移動祝祭日」にも登場し、ヘミングウェイが足しげく通ったのがサン・ジェルマン・デ・プレにある「ブラッスリー・リップ」。パリ最古の教会を望み、カフェ・ド・フロール、カフェ・ドゥ・マゴと黄金の三角を形成し、左岸文化に一役買った。今回はリップ隣のオ・マノワール・サン・ジェルマン・デ・プレというホテルに5泊した。そして昨年の旅行に続いて、ここで旅行最後の夕食を取った。

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 タイルと鏡に飾られた室内には、白布で覆ったテーブルが隣と接するようにびっしり並んでいる。メニューは伝統料理中心。エスカルゴと舌平目のムニエル、牛肉ステーキ、そして赤ワインのハーフボトルをオーダーした。ギャルソンがかっこいい。イブ・モンタン主演の映画「ギャルソン」の舞台になったほどだから。年配のギャルソンが、バゲットにざくざくナイフを入れ、舌平目のムニエルを2人用にときれいに切り分ける。年季の入った所作がとても様になっている。帰り際、昨年来た時に担当した初老のギャルソンにその時撮った彼の写真を見せたら、「あー、父親だね」と冗談で返された。

 

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創業1686年 

 現存するパリ最古のカフェ、レストランとされる「ル・プロコープ」は、カフェとしてスタートしたとされ、ヴォルテール、ルソーが来た、フランス革命のディドロやダランベールの議論の場だった、若いころのナポレオンが来て代金替わりに帽子を置いて行った、それが今も飾られている、との話なのだが、どこまで本当かは知らない。看板には「1686年から」とちゃんと書いていて、観光客が足を止める。

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 オデオン駅に近い小さなパッサージュと背中合わせの店、というか表通りに入口があり、パッサージュ側のテラス席まで店がつながっている構造で、政府から追われた革命家が、表から店に逃げ込み、裏のパッサージュ側から逃げるということもあったんかいな、と想像する。

 店内はマホガニーの調度品や階段、古めかしい肖像画がそれらしい雰囲気ではある。今回が初訪問で、昼のムニュ20€を注文した。伝統料理で、野菜のビシソワーズはボリュームたっぷり過ぎ、牛バラ肉のステーキも付け合せのジャガイモがはんぱな量ではなく、18世紀、19世紀を味わわせてやろう的な料理だった。ギャルソンのサービスは比較的淡泊ながら、好感が持てた。

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帰り際、入口近くに陳列された「ナポレオンの帽子」と記念撮影をした。  

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