パリ95番バス

映画と本とアートと遊歩

LIBRAIRIEという名の本屋

 なぜかパリの書店はかっこいい。外国の書店は他にはローマのベネト通りぐらいしか記憶にないけれど、これもいい感じだった。ショーウインドウに本がおしゃれに飾られているから?天井が高く上の棚まで本が並ぶ一方で平積みも多い書店内のレイアウト?日本語ではない意味不明の本が並んでいるから?どうも、三番目のような気がする。 

レキューム・デ・パージュ

 

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  サン・ジェルマン通りを挟んで、宿泊したホテルの向かいに「L‘écume des pages (レキューム・デ・パージュ=ページの泡)」という書店がある。「カフェ・ド・フロール」の隣でもある。ここで、ロベール・ドアノーの写真集(DOINEAU PARIS)を買った。9.9€と安い。ドアノーの写真は、日本でも人気がある。パリの街と人のユーモラスで温かなショット。

 ドアノーの別の写真集「パリ郊外」は、隻腕の作家ブレーズ・サンドラールが文章を書いた一冊で、これについては仏文学者で作家の堀江敏幸さんが「郊外へ」という本で、とても美しい一文を書いている。パリの写真家たちについては、もう少し勉強して改めて書きたい。

店では文房雑貨も扱っている。レジのおじさんが知的で飾り気なくいい感じ。

 f:id:LOUVRE:20170619160945j:plain  後で知ったが(後で知ることが多すぎる)、この書店は「世界の夢の本屋さん2」(エクスナレッジ)という本でも紹介されている。それによると、店名はボリス・ヴィアンの小説「L’écume des jours(日々の泡)」に由来するとか。文化人のたまり場カフェも多い界隈は、以前は書店も数多くあったが、ブティックなどに次々と変わってしまい、本屋の意地を見せているのが、この書店らしい。

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 大学で仏文を専攻していた時、読みもしないのに、というか読めもしないのに、気分でフランス語のペーパーバックを何冊も買い、40年以上たった今も多くは手つかずで本棚にある。パリに来ると、つい買いたくなるが、読めない、読まないのに、とブレーキをかけ、画集や写真が多いものならOKということにしている。

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 今回、ボンマルシェ内の書店でも「Paris vu et vécu par les écrivans (作家たちが見て住んだパリ?)」 と「 Paris et sa Tour Eiffel(パリとエッフェル塔)」の2冊を買った。ともに14.9€。これも写真の多さを考えると安い。前者はバルザックからボードレールユイスマンスセリーヌ、プレヴェールら19世紀から21世紀にかけての21人の作家の住居とパリへの思いをまとめた本で、作家の肖像と昔のパリの写真が味わい深い。英語訳付なので、仏語だけよりは多少読解できるかもしれない。表紙は、ドアノー撮影のカフェ・ドゥ・マゴでのボーヴォワールの写真。

 後者の本はタイトル通り、パリとエッフェル塔のかかわりを一冊にまとめた本、のようだ。これも写真がなかなか面白い。

 

リブレリ・ジュソーム

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 セーヌ右岸、パレ・ロワイヤルに隣接した美しいパッサージュ、ギャラリー・ヴィヴィエンヌには「Librairie Jousseaume(リブレリ・ジュソーム)」という書店がある。ポストカード8枚を10€で買った。うち4枚はプチ・プランス、星の王子様のポストカード。孫用に妻が選んだ。ヒッチコックとウォーホルのツーショットとか、マリリン・モンローとか、パリとあまり関係ないポストカードも混じっているが、いいことにしよう。こちらは「世界の夢の本屋さん」にも紹介されている有名書店らしい。ギャラリー・ヴィヴィエンヌができて間もない1826年の創業とかで、雰囲気のあるおじさんがいて写真を撮らせてもらったが、この人が現在の経営者のジュソームさんだった。

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古い古い本から現代の本まで、どんな選択肢で並べているのか、聞きようもなかったが、また、昼間というのに他に客はおらず、商売が成り立っているのかさえ不明だが、このパッサージュにこの書店ありということで、収支は関係なく、存在していることに意味があるのだろう(「世界の夢の本屋さん」には、インターネット販売が支えている、とある)。棚で埃をかぶる古い本は19世紀にとどまらず、18世紀、17世紀に遡っていきそうで、時間の堆積がすごい。まあ、神田の古い文書、書画を扱っている書店ならもっと堆積しているのかも知れないけど。

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