パリ95番バス

映画と本とアートと遊歩

スペインの春④トレドの夢

マドリードから世界遺産の古都トレドへはバスで1時間ほど。この程度のバス移動なら楽ちんだが、翌日からは3時間、4時間がかりの行程が待っている。 街の三方を堀のように囲むタホ川の対岸から、旧市街の全景を見る。河岸にごつごつした岩が露出し、王城の…

スペインの春③「ゲルニカ」

プラド美術館から国立ソフィア王妃芸術センターへ。 ソフィアも与えられた時間は40分。1992年開設の現代美術館で、目玉はピカソ(1881~1973)の「ゲルニカ」だ。 http://www.museoreinasofia.es/en/collection 内戦時の1937年4月、反共和国政府のフランコ…

スペインの春②プラド美術館の一時間 下

プラド美術館はフランシス・デ・ゴヤ(1746―1828)の絵画150点、素描、版画500点を所蔵し、ベラスケスとともに、世界最大のコレクションを誇る。 ピレネー山脈でフランスと隔てられたスペイン北東部、アラゴン地方の寒村で生まれ育ったゴヤは、若くして職業…

スペインの春①プラド美術館の一時間 上

スペインといえば、今もまだドン・キホーテの国! 4月19日、ホテルからバスで朝一番に連れて行ってもらったのが、スペイン広場。 ドン・キホーテとサンチョ・パンサの像があり、二人を作者セルバンテスの像が見下ろしている。 前日深夜、マドリードのホテル…

「ビュールレ・コレクション」はなかなか凄かった

東京・六本木の国立新美術館で開かれている「至上の印象派展 ビュールレ・コレクション」が思いのほか良かった。印象派の世界有数の個人コレクションの看板に偽りなしでした。 目玉のルノワールの「イレーヌ」がひときわ輝きを放っている。「イレーヌ・カー…

スピルバーグ映画ではないけれど「ザイムショー・ペーパーズ/改ざんしまくり」

300か所にわたる財務省の「森友文書」改ざんの詳細が、新聞各紙に一斉掲載された3月13日(火)のちょうど1週間前、朝日新聞朝刊に、映画監督スティーブン・スピルバーグのインタビュー記事が載った。 今年のアカデミー作品賞などにもノミネートされた最新…

二人の写真家の「読む時間」

昼寝するゾウに寄り添うようにして本を読む上半身裸の男。場所はタイのチェンマイ。 スティーヴ・マッカリーの写真集「読む時間」は表紙から目をくぎ付けにする。 クラシックカーのそばで新聞を広げるキューバの男。 アフガニスタンのカブールでは、古着が…

「黒い睡蓮」 たまにはミステリー

クロード・モネが後半生を送ったフランス・ノルマンディー地方の小村ジヴェルニーを舞台にした仏製ミステリーと聞けば、読まないわけにいかない。 睡蓮の池近くで村の眼科医の男が水死体で見つかる場面から始まり、3世代、3人の女性の話が並行して叙述され…

犬の話

犬の一生は短い。 欠点はそれだけである。 「人生はワンチャンス!」という本の巻頭にある、作家アグネス・スライ・ターンボールさんの言葉。 戌年. 我が家のウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(ウェスティ)のルーヴル(雄)は先月10歳になり、人間…

ニューヨークの秋(6日目、帰国)ウォーホル、サリンジャー、スティング

夢かうつつか、遠くから騎兵隊の突撃ラッパのような起床ラッパのような音が聞こえてくる。NY最後の朝の幻聴?長く長く続いて、しっかり目が覚めてやっと鳴りやんだ。変わり種のアラームだったのか。 23階のホテルの部屋。大きな窓のカーテンを開けると、明…

ニューヨークの秋(5日目) MoMAからストランド・ブックストアへ

(ピカソ「三人の音楽家」) アートの街、街のアート ニューヨーク近代美術館(MoMA)の開館は午前10時30分。ホテルの1ブロック東にあり、開館まで周辺をぶらぶらする。前日と違って、ビジネスパーソン風の人たちの足早の往来が多い。車もつんのめるよう…

ニューヨークの秋(4日目)マラソンのちステーキ

これが五番街 ニューヨーク・シティ・マラソン当日。といっても走るわけではないが、NYに来るまでは見られたら見るぐらいにしか思っていなかったのに、前日のプレイベントの雰囲気に圧されて、今日はゴール間近のホテル、ザ・プラザ前で見ることにした。曇…

ニューヨークの秋(3日目) 超広角メトロポリタンwith セントラルパーク

(セントラル・パークを窓越しに望むメトロポリタン・ミュージアム) プレ・マラソン 朝9時過ぎ、ホテルの回転ドアをくぐって六番街に出ると、カラフルなウェアのランナー集団が車道に広がって走っていた。ニューヨーク・シティ・マラソンは明日5日の日曜…

ニューヨークの秋(2日目)9・11メモリアルからブルックリン

街を巡り、昼と夜の摩天楼群を展望し、ブックリン橋を渡ると、ここは人種だけでなく近現代建築物の坩堝だとわかる。 ダウンタウンツアー バス ナイトツアーの興奮が尾を引いたのか、寝付けないまま朝を迎え、ぼんやりした頭で、ホテル向かいのスターバックス…

ニューヨークの秋(1日目)摩天楼ナイトツアー

(二階建てバスからのタイムズ・スクエア) 到着の夜、予定していなかったナイトツアーに参加したら、想像を超える景色に、ニューヨークハイとなった。 ロケ地・NY 11月2日午後1時55分、大阪空港発のANAで成田へ。午後4時40分発のJFK空港行のAN…

ホテル・エドゥアールⅦ(Hotel Edouard 7)―オペラ座近くにあって便利でこぎれい

ホテルに到着して部屋の窓を開けたら、オペラ・ガルニエの正面が眼に飛び込んできた。広いオペラ通りに面したセーヌ右岸2区のホテル。ここから、南仏に小旅行をして戻ってきたら、部屋が変わっていて、オペラ座は見えず、マンションの屋根、屋根、屋根。そ…

映画「セザンヌと過ごした時間」(2016年)ー林檎を描く姿を見たかった

セザンヌの絵が20世紀の芸術家の心をとらえたのはなぜか、その絵はどのようにして描かれ、あの造形、色彩、タッチに込められたものは何か、もろもろのセザンヌ絵画の秘密を映画は見せてくれるのではないか、という期待が多少あったのだけれど、むろんそれは…

パリ ピカソ美術館(Musée Picasso Paris)ー北斎とピカソは似ている

ピカソの作品は4点買った。うち2点は居間に飾っている。本物ではないが(言わなくてもわかっている)、部屋の装飾に悪くない、と思っている。 1点はパリのピカソ美術館で買った「ヴァイオリンと楽譜」。素材を張り合わせたコラージュで、キュビズム時代の…

日常に魔法をかける 映画とアートと直木賞

「私の描くグッとムービー」というコーナーが、朝日新聞の金曜の夕刊にある。いろんな人が、イラストとともに好きな映画を1本、マイライフにからめて紹介するのだが、映画評論の専門ではない人だからこその視点と出会いが面白い。 9月8日は、イラストレー…

決定的瞬間の記憶「パリ・マグナム写真展」

写真家の優れた眼なのか、被写体の持つ物語性なのか、パリ好きのフィルターのせいなのか、パリをテーマにしたマグナムのこの写真展(京都文化博物館、9月18日まで)は面白かった。 アンリ・カルティエ・ブレッソンの最もよく知られた「ヨーロッパ広場、サン…

「細雪」と「ダウントン・アビー」ではなく、桐野夏生「デンジャラス」 

谷崎潤一郎の「細雪」がとてつもなく面白い小説である、ということに60歳を過ぎての初読で知った。芦屋市谷崎潤一郎記念館の元館長のT・Kさんに繰り返し薦められていたのに、文庫本で3.8㎝の厚さ(中公文庫)に腰が引けていた。映画も原作に誘う魅力はなかっ…

戦後72年の夏 NHKスペシャル、新聞そして映画

8月は戦争の記憶を呼び戻し、鎮魂する月だ。 NHKは8月12日から4夜連続のNHKスペシャルで第二次世界大戦のドキュメンタリーを放送した。初日の「本土空襲 全記録」はたまたま家に来ていた小学1年生の孫と一緒に見た。40万人以上が死んだ空襲、米戦艦に突…

「世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史」(スティーブン・ジョンソン 朝日新聞出版)

因果関係のドラマが、目からウロコの面白さだった。 歴史の面白さは因果関係を知るところにあると思う。人、モノ、環境が何を変え、その結果どうなったか、に尽きる。受験のために歴史を丸暗記しても、興味が持てなかったのは、その面白さを知らなかったか…

パリ、ジュテーム(Paris, je t'aime)(2006)

18編のうち仏人監督は4編だけで、あとは米、英、独、スペイン、カナダ、ブラジル、日本、豪、南ア、メキシコの監督というオムニバス映画。パリ20区のうち18区(あとの2区も制作され、DVDの特典には入ってるらしい)での「街角の小さな恋の物語」だが、1話…

ミッドナイト・イン・パリ(Midnight in Paris)(2011)

パリ好きなら、イントロから心をつかまれてしまうだろう。パリの観光名所と街並みが朝から夜にかけ流れるように映し出される。セピア色というわけではないのに、なぜか懐かしさを感じる風景。 フランス人の監督ならこうは撮らないだろうなあと思う、照れくさ…

ギュスターヴ・モロー美術館(Musée Gustave Moreau)

7月23日のNHK日曜美術館「魂こがして青木繁~海を越えた“海の幸”と石橋凌の対話~」にギュスターヴ・モロー美術館が登場した。オランジュリー美術館で開催中のブリヂストン美術館展で、パリの人々は、里帰りした印象派の画家たちの絵画に加え、明治の天才…

ホテル ドービュッソン(Hotel d'Aubusson)

17世紀の邸宅を改装した6区サン・ジェルマン・デ・プレ地区にある洒落た五つ星ホテル。1泊300€~400€と、馴染み宿より少し値が張るので、1年前に2泊だけさせていただいた。値が張る分、プチゴージャス感が味わえる。 歴史を感じさせる サロンの家具調度…

佐藤正午「月の満ち欠け」

佐藤正午さんは、いつごろからか、新作の小説が出ると必ず読むという稀な作家になった。 前作「鳩の撃退法」は上下巻を読み終えるのが惜しいほどで、いつまでも作品世界に浸っていたいと思わせた。贋札か真券か曖昧模糊とした札束3000万円の詰まった鞄を預か…

オルセー美術館(Musée d’Orsay)後篇

悲劇の二人 オルセーのヴァン・ゴッホは「星降る夜」「アルルの寝室」「自画像」「オーヴェール・シュル・オワーズの教会」がよく知られ、人気も高い。 「星降る夜」はアルル時代の作品、「アルルの寝室」はアルルでゴーギャンを待つ時の寝室の情景で、二人…

オルセー美術館(Musée d’Orsay)前篇

印象派の殿堂と称されるオルセーは、数あるパリの美術館のなかで、一番好きな美術館だ。ルーヴルが少々胃もたれする脂っこい伝統料理だとすると、こちらはヌーヴェルキュジーヌ。あるいは1950年代、それまでの映画に叛旗を翻し、リアルなテーマ、撮影と編集…